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プリウスはタイ国に進出できるのか
高崎経済大学黒川研究室
橋本隆寛
本研究では、トヨタのハイブリットカーであるプリウスについて研究するものである。現在、日本ではプリウスを筆頭にしてエコカーが流行している。近年、ハイブリットシステムを搭載した車種が次々に発表されていることから、これからさらにハイブリットシステムを搭載した車種は増え、将来的には電気自動車に切り替わると考えられる。では経済成長の著しいタイ国でもエコカーは流行するだろうか。2009年にタイ国において人気のあるカムリという車種からハイブリット車が発表された。しかし、タイ国においてプリウスはまだ販売されていない。プリウスのタイ国進出について研究することは一定の意義があると考えられる。
本研究の目的は、プリウスがタイに進出する可能性を明らかにするものである。タイ国では、近年LPガス対応車への改造が増えている。LPガスはガソリンに比べ、安価である。またガソリンにエタノールを混ぜてあるガソホールが人気である。ガソホールはエタノールを混ぜてある分普通のガソリンよりも安価である。
結果として、タイ国では燃料費を安くしたいという人が多いと考えられる。プリウスは最先端のハイブリッドシステムを搭載し、それはトップクラスの燃費性能を持ち、世界中で売れている。タイ国でも、トレンドという面と燃費性能という面で受け入れられると考えられる。つまりプリウスはタイ国に進出可能である。
途上国援助においての企業の担う役割-加速するCSRムーブメントの危険性
高崎経済大学黒川研究室
久保麻奈美
近年、どういったCSR活動を行っているかがその企業の評価を決める大事な指標となってきている。CSR(Corporate Social Responsibility)とは、「企業の社会的責任」の意である。企業は利益を追求するだけでなく、組織活動が社会へ与える影響に責任を持ち、社会的な公正さや環境への配慮などを通じてステークホルダーに責任ある行動を取るべきという考えである。
CSRへの関心は急速に高まり、企業がCSR活動の一環として途上国に対する開発援助を行う風潮が起こっている。また、このことは社会にだけでなく、企業にとってもさまざまな利益がある。このように企業が自己利益を追求することに加え、社会との接点を考えながら事業を展開することで社会にとってもメリットがあり、企業にとっても、販売促進に加えて「社会的貢献を行う企業」としてブランドイメージが向上するというメリットがあるのだ。しかし、このようにさまざまな企業が社会の風潮にあおられ、途上国に援助を行うことは、本当に途上国にとって良いことなのだろうか。
本研究では、企業が途上国を支援することの危険性や途上国に与える負の影響を明らかにし、今後どのように援助に関わっていくべきかを考察していくことを目的としている。
結果として、ブームに乗っていようが、広報戦略であろうが、途上国を支援するということ自体は悪いことではない。しかし、途上国に与える影響は予想以上に大きいことを忘れてはならない。特別な活動、目立つ活動だけが社会貢献ではない。ブームにのって一時的に援助を行うことは途上国にとって、本当に役立っていることとは言えないだろう。CSRを「プロモーション」という視点からではなく、真に「コミュニティへの恩返し」という考え方で捉え、援助に関わっていくことが望ましいといえるだろう。本研究では、企業による援助の負の影響について考察してきたが、援助の持続可能性という視点からも考察していく必要があると考えられる。
開発途上国における情報化と日本によるICT支援-持続的成長のために
高崎経済大学黒川研究室
生天目千尋
近年のインターネットの急激な普及を典型として、経済あるいは社会における情報関連の環境は急激に変化している。情報通信技術(Information Communications Technology: ICT)を活用することによって私たちの生活は大きく変化し、より効率よく情報を手に入れることが可能となった。そして、ICTは生活の場面にとどまらず、農業や工業など異分野の産業におけるシステムの中でも活用されている。ところが、世界にはこのようなICTの便益を享受することができない人々が数多く存在し、ICTの恩恵を受けられる人との間に経済的格差が広がっている。
そこで、本研究ではこれを是正するために行なわれるICT支援について着目する。ICT支援の必要性は、ICT競争力指数と一人当たりGDPとの相関関係や、ICT投資と経済成長の相関関係によって説明されている。よって、情報化を促進することは途上国開発においても大きな意義があると予想できる。
さらに、日本によるICT支援政策に着目していく。本研究では、日本政府が開発途上国に対して、どのようなICT支援政策を行なっているのかが検証される。事例として、フィジーにおいて実施されている「南太平洋大学情報通信センター整備計画」が挙げられている。
本研究の目的は、ICT支援の重要性を説明した上で、ICTに関する日本の他国への支援の現状をまとめ、その実績を振り返るとともに、開発途上国が今後更に効率の良い経済的発展を遂げるために、どのような支援が必要であるかを明らかにすることである。
結果として、ICTの領域横断性によるメリットとデメリットが解明されるとともに、これからの長期的な目線による持続的な支援のための取り組みの必要性が説明された。また、各国が様々な発展の仕方をしていても、ICT支援は必ずニーズがあり、領域横断的な多種多様な支援の仕方を展開することが可能であるとも考察された。
バンコック都市交通システムにおけるMCタクシーサービスの今後の展望
高崎経済大学黒川研究室
佐藤友治
タイ国の首都バンコックでは、無計画な都市開発や経済成長に伴う自動車普及率の上昇、またそれに対応する交通インフラの脆弱性などの要因から恒常的に深刻な交通渋滞が発生してきた。
このような状況下でMCタクシーは渋滞をすり抜けることが可能であったため、1969年の登場以来たちまちのうちに普及し、現在でもバンコックを舞台に活躍している。
本研究はこのMCタクシーに注目し、バンコック都市交通を分析したものである。また、バンコックでは1999年にBTS(高架鉄道)が、2004年にはMRT(地下鉄)が開通しバンコック都市交通の大きなインパクトをもたらした。先行研究ではこのインパクトによりMCタクシーの需要が減少しつつあることを指摘されているが、それに対してMCタクシー側がどのような対策を講じるべきかについては研究がなされていない。
本研究の目的は、MCタクシーサービスの現状と課題を、サービスの利用者側、供給者側という両面から分析し、MCタクシーは将来のバンコックにおいてどのようなサービスを展開するべきか提案することである。
本研究の方法は、MCタクシーの歴史的背景、MCタクシーサービスの実態、またMCタクシーに影響を与えるものとして、上記のBTS、MRTの現状にも焦点を当て参考文献より分析する。また、黒川研究室が2005年~2008年にかけて行ったバンコックにおけるRTVの調査結果を分析し、ソイ内でのMCタクシーの実態を解明していく。
結果として、現在のMCタクシーサービスはある程度のルール作りが為されている産業であり、ある程度機能している大規模、小規模な運営委員会も存在することが確認できた。しかしながらBTS、MRTもまた年々利用者数を伸ばしており、共通チケットの導入などで利便性の向上も図られていることから、今後も更に利用者数は増加し結果MCタクシーの利用者が更に減少してしまう可能性がある。MCタクシーが更に発展していくためには、運営委員会の機能を高め、大小様々な面からアプローチしていくことが望ましい。
マイクロクレジットの日本での導入可能性
高崎経済大学黒川研究室
岡田宰
国際的な金融危機の引き金となったリーマン・ブラザーズの経営破綻から始まった近年の不況は、日本においてもリストラや派遣切り、内定取り消しといった「百年に一度の経済危機」と呼ばれる不況のあおりを受けている。総務省、厚生労働省が出したデータによると2009年7月の完全失業率は5.7%、有効求人倍率0.42%とともに過去最悪を記録し、失業者の数は350万人を超えているのが現状である。そういった失業者の生活を改善するための特別な取り組みの必要性があげられる。
そんな中、世界でも最貧国と言われるバングラデシュではグラミン銀行においてマイクロクレジットと呼ばれる貧困緩和対策が行われている。マイクロクレジットとは貧しい人々に担保や保証人無しで小口の融資や貯蓄の機会を提供し、事業拡大や収入増加をはかることで人々の自助努力を促す手法である。このグラミン銀行のマイクロクレジットの手法は1980年代になると、貧しい人々の所得向上だけでなく、自立、エンパワーメントなど、人々の能力を高めるためにも有効であるとして、世界の開発援助機関から注目を集めた。
本研究では、グラミン銀行におけるマイクロクレジットの概要、成功要因を明らかにし、現在の日本の不況を貧困率から再認識するとともに、欧米先進国での事例を参考にしながら日本でのマイクロクレジットの導入可能性を明らかにすることを目的としている。
結果として、潜在的に貧困に苦しむ人々は相当数に上ることが明らかになり、アメリカのマイクロクレジット機関であるKIVA同様、日本でもインターネット融資方式での導入可能性が示唆された。日本においても貧困対策は遠い先の出来事ではない。今回、日本でのマイクロクレジットの導入を考察することで現在の不況、貧困を緩和する一つの道筋を示すことができたと言える。
タイ国におけるジャズの発展可能性
高崎経済大学黒川研究室
武重俊輔
近年タイ国では急速な工業化により非常に大きな経済発展をとげている。それとともに芸術分野においても国内のものはもとより、国外のものも発展してきている。現国王であるプミポン国王はジャズファンとして知られ、タイ国の政治がアメリカに傾斜していく中で、アメリカの文化の認知度を高めるうえで絶大な効果をあげることとなった。ジャズの歴史を見れば、ジャズという音楽は他文化との融合という意味において非常に互換性に優れている。そして、融合した文化などを世界に知らしめると言った意味においてその有用性が認められる。
そこで本研究では、タイ国におけるジャズが、以前にはアメリカの文化認知度を高めることで大きな効果を持ったのに対し、現在におけるタイ国での発展・普及度合いをインドネシアや日本と比較することによって考察していく。
本研究の目的はまず、タイ国における経済状況は音楽を楽しめる環境にあるかということを考察し、「目標」として日本、「同じ開発国」としてインドネシアのジャズの発展・普及度合いを「見る、聞く、演奏する」といった点から比較し、タイ国のジャズシーンに言及でき得る事を考察する。
結果として、タイ経済の関しては順調に推移しており、また現在のジャズの発展・普及度合いに関しては「見る、聞く、演奏する」という視点から言えば整っているが、海外に発信されている情報量やその情報から聴かれる音楽性の幅といった意味で深く広く根付いているとは言えない現状が明らかとなった。しかし、コー・ミスターサックスマンなどの活躍は目覚ましく、まだまだ若手である彼の業績などから、これからの普及・発展には大きな期待が持てるといえる。
キャッサバによるタイ国東北地方開発の可能性
高崎経済大学黒川研究室
宮崎裕太郎
タイ国東北部はタイ国の全ての地域で最も開発と都市化の遅れた地域である。自然環境は、水資源の不足と降水量が不安定な乾燥気候のため、灌漑設備の技術的可能性が低く、農業開発に不利である。そのため、この地域のほとんどの農民は収穫が少なく不安定な天水依存の農業をしなければならない。米作はほぼ自給用であり、現金需要はキャッサバのような低価格産品や、臨時や季節的な農外就労によって賄われている。キャッサバは乾燥に強く、土壌条件の厳しい土地でも栽培が可能であることから,タイ国内にあって気象、土壌条件の悪い東北地方では主要農作物となっており,同国生産量の約7 割を占めている。
本研究では、タイ国東北部におけるキャッサバ生産を対象として、貧困緩和のための政策について、タイ国およびタイ国東北部における現状の農業の問題点と、問題の要因を農業発展の歴史から説明した。さらに、東北部でのキャッサバ生産状況、市場について説明し、位置づけを明らかにし、それらの点を踏まえた上でタイ国のキャッサバ産業に対する政策について考察した。
結果として、タイ国東北部における貧困には、農用地拡大による土壌悪化と、畑作作物の国際価格の変動による需給のバランスの悪化が影響していることが明らかになった。また、近年のタイ国のキャッサバ輸出の比重も大きく変化していることが説明された。政策については、2006年から急速に変化している穀物市場における政策とバイオエタノール政策について言及した。今回扱った政策は、タイ国政府による一方向のものであった。民間、NGO、諸外国の活動による影響も考える必要がある。
フェアトレードダイヤモンドの可能性
高崎経済大学黒川研究室
渡邉万里子
宝飾業界の中でもダイヤモンドは、特殊な市場形態となっている。ダイヤモンド業界を操っているデビアス社の存在なしには、現在のダイヤモンドの価格の安定は保ってはいられなかったとさえいわれている。しかしながら、ダイヤモンドの流通の裏には、紛争ダイヤモンドの存在や貧困、治安の安定しない国々の存在といったいくつかの問題点があげられる。
本研究では、フェアトレードダイヤモンドの可能性について、まずはダイヤモンドの基礎知識や採掘方法、デビアス社の歴史を説明した後にデビアス社の成功要因を考察することによって、デビアス社の人為的価格統制の成功が、デビアス社のダイヤモンド市場における偉大な地位を獲得した最大の要因だということを説明している。次に、ダイヤモンドの流通経路を明らかにしていき、流通経路に隠されている光と陰を考察した。さらに、複雑な流通経路はダイヤモンド原石の産出国だけではなく、多くの国々にも多額のお金を落とし恩恵を与えている反面、紛争ダイヤモンドの存在や採掘場の劣悪な環境といった問題が隠れていることを説明している。
本研究の目的は、デビアス社のダイヤモンド市場支配の成功要因を明らかにし、ダイヤモンド流通市場の問題点を明らかにした上で、デビアス社の独占にならないような市場を見出すことである。そして最後に、フェアトレードダイヤモンドの実現可能性を考察するものである。
結果として、フェアトレードダイヤモンド実現のためには、石油産出国がOPECを作っているように、ダイヤモンド産出国でもダイヤモンド協定を結ぶことが必要だと考えられる。また、個人採掘者などの利権を守るために、そして治安の改善を進めるためには、ダイヤモンド産出国の協力が不可欠であるという結論に至った。
よって、フェアトレードダイヤモンドの実現には、多岐にわたる流通経路を縮小し、透明性を高めていくことが成功の鍵になると考えられる。